不動産を購入する時に、夫婦の共有名義で住宅ローンを組むことは少なくありません。
ローンの借入額を増やせたり、税の負担が減ったりして便利ですよね。

しかし、離婚後も共有名義のままにしておくと、今後のトラブルになりかねません。
そのため、名義をそのままにしておかずに、離婚と同時かその前に名義の解消を行うことをおすすめします。

離婚すると、その住んでいた家は
・そのままどちらかが住む、または資産として保有する
・売却する
という2つの方法で対応することになります。

この2つの場合に分けて、共有名義の住宅ローンが今後に及ぼす影響や変更方法を見ていきましょう。

□離婚時に家を片方が持つことになった時、財産分与はどうなる?

まず前提として、家の名義を夫婦の共有名義にしたかを確認する必要があります。
夫婦の共有名義だった際は、それぞれの出した資産の合計金額で持分割合が決まりますよね。
例えば、夫が1200万円、妻が300万円だったとしましょう。
この場合の持分割合は、夫と妻で4:1となります。

ここで離婚したとすると、この共有名義の持分割合がそのまま家の分配になると思ってしまいますよね。
しかし、それは誤解です。
不動産は財産分与の対象になるので、持分割合に関係なく、夫婦で1/2ずつになるのが鉄則です。
つまり、夫と妻で4:1であっても家を分ける時は1:1になります。

これを踏まえて、夫婦どちらかが離婚後も家に住み続ける、もしくは資産として保有し続けるとなった場合を考えてみましょう。
家を購入した際の金額に関係なく、1:1の割合でのやりとりになるので、家をもらう側は相手に対して、家の価値の半額分を支払うことになります。

なお、財産分与を求める権利を行使できる期間には、2年以内という制限が設けられています。
離婚届を出してから2年が経過する前に、請求するように気をつけてください。

□共有名義はトラブルのもと!解消することをすすめる理由とは?

離婚する際は、夫婦の共有名義を解消することをおすすめします。
なぜなら、様々な問題を引き起こす可能性があるからです。
具体的に見ていきましょう。

*相手の同意が必要になる

離婚後も夫婦の共有名義だと、将来家を活用したい時に相手の同意を取る必要性が出てきてしまいます。
例えば、家を売却や賃貸に出したかったり、リフォームや建て替えをしたかったり、担保に入れてお金を借りたかったりする場合が当てはまります。
お互いの意見が合わないことも考えられますし、何より離婚後も相手との関係が続くことになるので、解消しなくて後悔してしまう方も多くいらっしゃいます。
特に後者が気に掛かるという方は、なるべく離婚と同時に名義解消すると良いでしょう。

*後から共有名義を解消すると問題が生じる

離婚後しばらく経ってから共有名義を解消すると、相手と連絡が取れなくて手続きが難しくなってしまう可能性が考えられます。
後ほど詳しく説明しますが、基本的に住宅ローンが残ったままだと共有名義は解消できません。
ローンの借り換えをするか、完済するかして、住宅ローンは離婚時にゼロの状態にし、共有名義を解消しておいた方が良いでしょう。

また、共有名義のままどちらか片方が亡くなってしまった場合に、相続関係でトラブルが起きてしまうかもしれません。
亡くなった側の遺族の配偶者と子供に共有名義人が移るので、手続きが複雑になってしまいます。

*相手の住宅ローン返済状況が分からない

離婚時に住宅ローンが残っている場合、住宅ローンが共有名義であればお互いに支払い続けていく必要があります。
しかし、相手の支払状況を確認する方法がありません。
そのため、相手の支払いが滞ると負担が偏り、返済できないままだと最悪家を差し押さえられる可能性もあります。
このようなトラブルを回避するには、共有名義を解消するしかありません。

□住宅ローンの共有名義の解消方法をご紹介

これまで、共有名義を解消した方が良い理由について述べてきました。
ここからは、住宅ローンの共有名義の解消方法を見ていきましょう。

共有名義を解消するには、返済の名義人を単独名義に変更する必要があります。
その方法は、住宅ローンがある場合とない場合によって異なるので注意して見てくださいね。

*住宅ローンがない場合の共有名義解消法

住宅ローンが残っていない場合の方法は非常に簡単です。
離婚が成立した後に法務局を訪れ、登記申請すれば完了します。
書類の作成を司法書士に依頼してもらうとより簡単に手続きができますが、費用が発生することに気をつけてください。

*住宅ローンがある場合の共有名義解消法

先ほども少し触れましたが、住宅ローンが残ったままで共有名義を解消することは基本的にできません。
その大きな理由として、共有名義の住宅ローンでは2人の収入を元に融資額を決定しているからというのが挙げられます。
そのため、住宅ローンを一度完済してしまうか、新たな保証人を加えるかしか方法がありません。

住宅ローンを完済するには、他の金融機関から借り換えをするか、第三者の連帯保証人を加えるかの2つの方法が最適です。
順に見ていきましょう。

まず紹介するのは、他の金融機関から借り換えをするという方法です。
他の金融機関で個人名義で住宅ローンを組み、前の住宅ローンを完済します。
そして新たに組んだ住宅ローンを返済していくという流れです。
新たにローンを組むと審査に通りにくい傾向がありますが、前のローンの借入時よりも収入が安定していたり、ローン残高が少なかったりする場合は問題ないでしょう。

次に、新たな連帯保証人を加えるという方法を見てみましょう。
住宅ローンを夫婦の共有名義で組んでいる場合、そのほとんどでお互いを連帯保証人になっています。
融資をした金融機関側にとっては、2人の収入を元に融資額を決定し、夫婦2人で連帯保証人になることで回収リスクを下げているのに、共有名義を解消するとなると回収リスクが跳ね上がってしまうので、簡単には了承できないのが現実です。

そのリスクを下げるために、第三者の新たな連帯保証人を加えることも1つの方法です。
そうすると名義変更を承諾してもらえる可能性が上がり、離婚後にはデメリットの方が多い連帯保証人からも外れられる可能性があります。

以上のようにして、共有名義は解消します。
このような解消のための話し合いや手続きは、離婚届を出す前にする方がおすすめです。
離婚が成立してしまうと、相手と連絡がつかなくなるというトラブルが起きかねません。
最初に紹介した財産分与の方も離婚届を出す前に対応し、全てが終わってから離婚届を出すようにしましょう。

□家を売却するという方法もある

共有名義を解消するには、家を売却するという方法もあります。
この場合、家を売却する価格と住宅ローンの残額の差によって対応方法が変わります。

*家を売却する価格より、住宅ローンの残高が低い場合

この場合をアンダーローンといいます。
アンダーローンだと、その家の売却で得た金額によって、残っている住宅ローンを完済できることになります。
そして、売却金額の残りは財産分与となり、基本的に夫婦で1/2の割合で分配されることがほとんどです。

*家を売却する価格より、住宅ローンの残高が高い場合

この場合をオーバーローンといいます。
オーバーローンの場合は、家を売却することはできません。

なんとか自力で資金を集めて完済するか、しばらく返済を続けてアンダーローンになるまで待つかという方法がありますが、あまり現実的ではないですよね。
手っ取り早く済ませたい場合は、任意売却という方法を選択するのも1つの手です。

任意売却とは、住宅ローンの融資を受けている金融機関から了承をもらって、一定の条件の元で売却をすることができます。
まずは金融機関に相談し、確認してみることから始めましょう。

□住宅ローンがある家は賃貸に出せない

離婚すると、その住んでいた家をそのまま売りも住みもしないという選択肢もあります。
資産として保有したり、他の事情で難しかったり、理由は様々ですが、何もせずそのまま放置するということは少ないのではないでしょうか。

せっかくなら有効活用したいと考え、第三者に家を貸してその賃料で住宅ローンの返済を考えている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、これには注意が必要です。

一般的に、住宅ローンはその家に住んでいることが条件です。
もし仮に賃貸に出したとして、第三者が住んでいることが金融機関に知られたら、全額一括返済を求めてくるでしょう。
詐欺罪に問われる可能性もあるので、勝手に賃貸にするのは避けた方が賢明です。
そのため、住宅ローンがある家は、そのまま勝手には賃貸に出せないと考えておくと良いでしょう。

しかし、絶対に不可能なわけではありません。
融資を受けている金融機関と話し合いができたり、審査に通して民間のローンに切り替えたりすれば、住宅ローンが残っていても賃貸に出すことはできる可能性があります。
売却に出すか、賃貸に出すかは一長一短なので、まずは不動産会社と相談してから決めると良いでしょう。

□まとめ

今回は、夫婦で共有名義の住宅ローンが離婚でどうなるのかという観点に基づいてお話していきました。

離婚後も共有名義にしていると、様々なトラブルの元になるため、離婚の前に手続きを済ませて解消しておくと良いでしょう。
解消法は住宅ローンの残高の有無によって異なりますので、事前に確認しておいてくださいね。

そして、共有名義の解消法も、家の売却も、賃貸に出したい場合も、家の住宅ローンが残っている場合は手続きが複雑になりがちなことがお分かりいただけたと思います。
その場合はまず不動産会社に相談し、対応を一緒に考えていきましょう。

福井・北陸周辺で家の売却を考えている方は、ぜひ一度当社にご相談ください。

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