「農地を相続したが農業をする予定はないため売却したい」
「畑を手放したいがどうすれば良いのだろう」
「田んぼや畑を高く売りたい」

農業を引退した方や使用しない農地をお持ちの方で、このようにお考えの方は多いでしょう。
田んぼや畑などの農地は、農地法によって売買に厳しい法的な制限がかかっており、誰にでも売って良いわけではありません。
そこで今回は、畑を手放したい方へ売却の方法や注意点をご紹介します。
畑の売却をお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。

□畑の売却をお考えの方へ!畑の売却は難しい?

田んぼや畑などの農地は、一般的な不動産とは異なり自由に売却できません。
農地法という法律が定められており、農業を引退しても農地を手放すのには時間と手間がかかります。
農地法によって農地を購入できるのは、地域の農業委員会に許可を受けた農家、または農業従事者に限られています。

そのため、買い手はかなり狭く農家間で売買する場合は、近隣の方や親族同士でおこなわれるのが一般的です。
最近は、農業に参入する企業も増えてきましたが、売却額はかなり安くなる心配があります。
また、太陽光発電の用地にする事業も一時注目されていましたが、環境問題が発生したり、収益性が不透明であったりといった問題があります。

さらに、高齢化や跡継ぎ不足により農家が減少しており、放置されている畑や田んぼも多くあります。
耕作放棄地が増えているということは、農地がいかに売りにくいかということの裏付けとも言えます。
とはいえ、農地をそのまま放置するのは、再び農地として使用する際に手間と時間がかかりますし、害虫や害獣の住処となって近隣に迷惑をかける可能性があるため、避けた方が良いです。

農地は早めの売却がおすすめです。
売却には2つの方法があります。

それは、農地のまま売却する方法と農地を転用して売却する方法です。
どちらも農業委員会の許可が必要となるため、その点に注意してくださいね。
農地のまま売却する場合は、先述した通り買い手がかなり狭まるため、早く手放したい場合や収益のことを考えるなら、転用がおすすめです。

転用して売却する場合は、「転用後に何を建てて何の目的でどういう風に使うのか」を申請前にあらかじめはっきりと決めておく必要があります。
また、転用に必要な資金も用意しておく必要があり、それらに特に問題なければ申請が通ります。

□畑を売却する際の手続きと流れをご紹介!

続いて、売却の流れについてご紹介します。

1:役所への事前相談
はじめに、役所への事前相談を行います。
3条許可なら農業委員会、5条許可なら都道府県知事または指定市町村長が相談先となります。
3条許可というのは農地のまま売却することを指し、5条許可というのは農地を農地以外に転用して売却することを指します。
また、5条許可の場合は農地転用できるかどうかを確認するために、事前に役所に農地種別調査を依頼します。

2:価格査定
売却の許可の見通しが立てば、次は売却予定の農地の価格査定を不動産会社に依頼します。
農地の価格は、地域や面積、土壌の状態、転用の有無等で価格が異なるため、綿密に調査して適切に査定してもらうことが重要です。

3:媒介契約の締結・売却活動の開始
依頼する不動産会社が決まったら、不動産会社に仲介を依頼し媒介契約を結びます。
契約締結後、売却活動を開始します。
売却活動は、許可申請前に行うのが重要です。

それは、3条許可においては、新たな買主に農業ができる能力があるか、5条許可においては、転用後の買主の事業に確実性があるかの審査が行われるからです。
したがって、農地の売却では媒介契約締結後に売却活動を行い、買主が決まった後に許可申請を行うというのが基本的な流れとなります。

4:停止条件付き売買契約
買主が決まったら停止条件付き売買契約を結びます。
停止条件付き売買契約とは、条件とする事実が発生するまでは、売買のような法律効果の発生を停止させるという契約のことです。
農地法に基づく許可が下りない限り、農地の売買契約は無効です。

一方で、許可を取得するためには先に買主を見つける必要があります。
そこで、停止条件付きの売買契約を締結し、契約時点では契約の効力を発生させず、許可が下りた後、契約の効力が発生するように段取りを整えておくのです。

5:許可申請・許可指令書交付
売買契約締結後、許可申請を行います。
許可申請から許可指令書の交付までは、1カ月程度かかります。

6:引き渡し
農地法に基づく許可が下りたら、次に引き渡しを行います。
引き渡しでは、所有権移転登記申請のために、売主が農地法の許可指令書を買主へ引き渡すことが必要となります。

7:確定申告
畑の売却で税金が生じる場合や、節税のために特例を利用する場合には、確定申告が必要です。
確定申告は売却した翌年の2月16日から3月15日までの間に行う必要があります。

□畑の売却価格はどのようにして決まるのか?

続いて、田んぼや畑などの農地の価格を決定づける評価項目をご紹介します。
こちらは農地のまま売却する場合の評価項目となります。
ぜひ参考にしてみてください。

・日照、乾湿、雨量などの状態
まず、その農地が基本的に農業に適しているかをみます。
農業に適しているか判断するポイントとしては、日照度、降雨量、土地の乾湿度などが挙げられます。
これらのポイントを押さえていると、高額売却につながります。

・土壌や土層の状態
農地の土壌が汚染されている場合は、安全な農作物が作れないため論外です。
また、土層の状態や頑丈さもポイントとなります。
地盤が脆弱の場合は、コンクリートで固めても評価は低くなってしまうので、注意してくださいね。

・農道の状態
農道の横幅が十分に広いか、農道はしっかり舗装されているかどうかで使用可能な農機具が限られます。

・灌漑排水の状態
灌漑(かんがい)とは、農地に外部から人工的に水を供給することです。
灌漑と排水は一体で評価されることが多いです。
灌漑排水の仕組みがしっかり稼働していない場合は評価は低くなってしまいます。
自分で改善できる部分があれば、売却前に補修することをおすすめします。

・耕うんが難しいかどうか
耕うんとは田畑を耕す作業の1つです。
土壌改善や種まきなどを指します。
耕うんがしやすいか、耕うん機をスムーズに導入できるかなどで、総合的に判断していきます。

・集落との距離
人が生活している集落と農地の距離がどれくらいかでも評価は変わります。
転用に関するルールも変わってくるのでしっかり確認しましょう。

・集荷地との距離
集荷地とは、田んぼや畑で採取した作物を集める場所のことです。
集荷地との距離が遠いほど農業のコストがかかるため、評価は低くなってしまいます。

・災害のリスク
浸水、土砂崩れに遭いやすいようなエリアの農地は、評価が低くなりやすいです。
たしかに面積やアクセスの良さも大事です。
しかし、農家からすれば安定的に農業が出来ることが何より大事です。
したがって、災害のリスクがあると買ってもらえる可能性は低いです。

・公法上・私法上の規制・制約など
公法上、私法上の規制、制約もチェックされます。
これらは自治体によっても異なるので、事前に確認しておきましょう。
その他にも面積の広さやアクセスの良さも考慮され判断されていきます。

□畑を売却する際の注意点をご紹介!

ここまで、畑を売却することの難しさや売却手順、売却価格の評価項目についてご説明しました。
最後に、畑を売却する際に押さえておきたい注意点をご紹介します。
農地の売買で失敗したくない方は、ぜひ参考にしてみてください。

1つ目は、周辺環境の整備が必要なケースもあることです。
農地を転用し宅地として売買する場合、周辺環境の整備が必要になる可能性があります。
宅地として売却する場合は、建築基準法を満たす必要があり、接道義務を満たすために道路と接するように宅地を設定するか、道路整備を行う必要があります。

2つ目は、農地売却に強い不動産会社を選ぶことです。
田んぼや畑などの農地を売却するなら、農地売却の実績がある不動産会社を選ぶようにしましょう。
特に農地は一般的な不動産より難しいと言われているため、信頼できる不動産を選ぶことが重要になります。

また、査定額だけで不動産会社を選ぶことも避けましょう。
わざと高い査定額を提示し、契約締結を目的とした悪徳業者も存在します。
実績や担当者の力量もしっかり見て選びましょう。

3つ目は、農地が荒れていると売買できないことです。
荒れた農地の売却をお考えの場合は、事前に手入れをしておく必要があります。
手入れは近隣の農家に耕作してもらったり、業者に依頼したりする方法があります。
また、耕作放棄地の再生に必要な費用を一部補助してくれる自治体もあります。
一度確認してみると良いでしょう。

4つ目は、転用後はすみやかに売却することです。
農地の転用は、農地以外の用途で所有者が使用する場合と、第三者に売却する場合にのみ許可されます。
転用後に土地を少しだけ利用して売却することは認められていません。
また、農地の税制面などを優遇されていた生産緑地が2022年に解除されるため、2022年以降は売却価格が下降することが考えられます。

これを2022年問題と呼ぶこともあります。
したがって、農地はなるべく早めに売却しましょう。

□まとめ

本記事では、畑を手放したい方へ売却の方法や注意点をご紹介しました。
田んぼや畑などの農地は、通常の不動産とは売却方法が異なるため、事前の下調べが大切です。
農地のまま売却するか農地を転用して売却するかよく考えて決めてくださいね。
本稿が皆さんのお役に立てれば幸いです。
畑や田んぼなどの農地の活用や売却に関するご質問やご相談等については、お気軽に当社までお問い合わせください。
当社がお客様のご状況に合わせた売却方法を提案させていただきます。

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