不動産を売却した時に必要になるのが確定申告です。
一方で不動産の売却経験はあまりないものですし、あまり知識がない方も多いでしょう。
そこで今回の記事では、確定申告についてご紹介します。

□不動産を売却すると確定申告が必要になる

土地や建物を売却し利益が発生した場合、利益に対して所得税が発生します。
そして、利益が出た年の翌年3月15日までに、在住地域の税務署に確定申告を行い、納税しなければなりません。

ここで出た利益は、「譲渡所得」と呼ばれます。
譲渡所得は、譲渡したことによる収入から、取得費と譲渡費用を引くと求められます。
この譲渡所得に対して、様々な税率がかかります。

譲渡所得は、不動産の所有期間によってさらに分けられます。
具体的には、5年を超える譲渡所得は「長期譲渡所得」、5年以下の所有の譲渡所得を「短期譲渡所得」と言います。
そして、この所有期間によって税率も変わってきます。

長期譲渡所得に対する所得税は15%、復興特別所得税は0.315%、住民税は5%、税率の合計は39.63%です。
一方で短期譲渡所得に対する所得税は30%、復興特別所得税は0.63%、住民税は9%、税率の合計は39.63%です。
したがって、不動産は所有期間が長いほど税金はかからなくなります。

□確定申告しないとどうなるか

確定申告の期間は決まっており、基本的には2月16日~3月15日です。
期日までに申告をしなければ、附帯税が発生します。
この附帯税には2種類あるので、以下ではそれについてご紹介します。

*無申告加算税

1つ目は無申告加算税です。
この税金は、税額に応じて変わってきます。
基本的に、50万円までは税率15%、50万をこえる部分に対しては20%の税率が加算されます。

なお、税務調査前に自分から申告をした場合は5%、調査通知後に自分から期限後申告書を提出した場合は、税額に応じて前述した税率分の税金が発生します。
さらに無申告について悪質と判断された場合、最高で40%もの税が発生してしまいます。

このように無申告加算税は非常に高額で、例えば60万円の譲渡利益が発生した場合9万円もかかってしまいます。
そのため、申告はきちんと行うことが大切です。

*延滞税

これは、法定期限日の翌日から申告書を提出する日までの日数に応じて加算される税金です。
したがって申告書の提出が遅れるほどこの税金は大きくなってしまうため、できるだけ早く申告書は提出しましょう。

□特例を活用して節税する方法

ここでは、いくつか特例を活用して節税する方法をご紹介します。

1つ目は、3000万円の特別控除です。
これは売却した不動産が「居住用財産」、つまりマイホームだった場合に適用される制度です。
所有期間の長さに左右されず、課税譲渡所得から3000万円分を控除できます。

なお、この特別控除は住宅ローン控除との重複適用ができません。
マイホームを売却して新たにマイホームを建て替える場合、どちらの控除を適用すると得なのかを考える必要があります。

以下に、より具体的に3000万円の特別控除を受けるための条件を述べます。
なお、ここからはこれら条件を満たす住宅をマイホームと定義します。

・住宅が、現在主として居住している住宅の場合
・居住用に供さなくなった日から3年経つ都市の年末までに売却した場合
・建物を取り壊した場合、取り壊し日から1年以内に売却に関する契約が締結されている場合
・転勤等で単身赴任の場合、配偶者等が居住している場合

2つ目は、10年超所有軽減税率の特例です。
この特例を受ける条件は2つです。

・売却した不動産がマイホームであること
・売却した年の1月1日時点で、所有期間が10年を超えていること

この特例を受けると、課税所得税の6000万円以下の部分に対してかかる税率の総計を14.21%にできます。
また、この特例は3000万円の特別控除と併用することが可能です。

3つ目は、特例居住用財産の買い替え特例です。
これは、マイホームを売って新しいマイホームを購入した時に適用できる特例です。

内容としては、買い替え代金に充当した額について課税が繰り延べられます。
なお、この繰り延べた分は、次回の売却時に負担する必要があります。
また、この特例は3000万円特別控除や軽減税率、住宅ローン控除と重複併用できません。

4つ目は、居住用財産の買い替え等の場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除です。
これは、譲渡所得でなく譲渡損失が出た場合、その分を他の所得と損益通算できる制度です。
損益通算してもマイナスが残る場合、翌年以降3年間は繰越控除可能です。
なお、この特例を受けるためには不動産売却年の1月1日時点で所有期間が5年を超えている必要があります。

5つ目は、特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除です。
これは、一定のマイホームを売却して譲渡損失が生まれた場合、損益通算できる制度です。
この場合も、損益通算後にマイナスが残る場合、翌年以降3年間は繰越控除できます。
なお、この特例はマイホームを買い替えなくても適用できます。

6つ目は、相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例です。
この特例は、相続した不動産を一定期間のうちに売却すると適用されます。
内容としては、相続税として支払った金額の一部を譲渡所得の計算上の取得費に加算できます。

この特例を受けるための条件は以下の通りです。

・相続または遺贈によって財産を取得していること
・相続税が課税されていること
・相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以降3年を経過する日までに譲渡していること

取得費に加算できる相続税額は、相続税に売却不動産の課税額を掛け、相続した財産の合計額で割った額です。
この特例を適用すると、取得費が増えて課税譲渡所得が減るため、結果として納税額を抑えられます。

□相続不動産の売却で利益が出ると確定申告が必要です

ここでもう一度、確定申告が必要になるケースを確認しておきましょう。
基本的に、売却によって利益が発生すると確定申告が必要です。

確定申告が必要かを判断するときに注意すべきなのは、特例や控除が適用前の物であることです。
特例や控除を適用して譲渡所得がマイナスになった場合でも、確定申告は必要ということです。
というのも、これら特例や控除は確定申告を条件としているためです。

最後に、確定申告を行うタイミングを確認しておきましょう。
確定申告を行うタイミングは、売却した翌年の2月16日から3月15日の間です。
たとえば2022年11月11日に不動産を売却した場合、確定申告は2023年2月26日~3月15日の間にする必要があります。

確定申告はインターネットで行えますし、最近ではスマートフォンでも可能になりました。
確定申告の方法もインターネット上で確認できるので、ぜひ利用してみてください。

□相続不動産で確定申告が不要になると判断できる場合は?

先ほど確定申告が必要になるケースについてご紹介しましたが、一方で確定申告が不要になるケースも存在します。
ここでは、不要かを判断するためのポイントをご紹介します。

1つ目のポイントは、取得費は被相続人が取得した費用で算出することです。
譲渡所得を算出する際に差し引くことになる取得費は、被相続人が取得した時の費用で計算します。

しかし、中には取得費が不明なケースもあります。
具体的には、購入から長期間が経過して当時の売買契約書や領収書がない場合や、前の代から相続された不動産である場合などです。
取得費が不明だと譲渡所得は高額になってしまうことがあります。

取得費が不明な場合、概算取得費を用います。
概算取得費は売却価格の5%です。

しかしこの売却価格は非常に損である可能性があります。
たとえば実際の取得費が3000万円で売却価格が5000万円だった場合、実際の譲渡利益は2000万円になります。
このケースで取得費が不明だと、譲渡所得比は概算取得費250万円を差し引いた4750万円となり、税額が非常に高額になってしまいます。

このようなとき、購入当時の取得費を推察できるような資料を提出すると認められる可能性があります。
具体的には、以下のような資料が必要です。

・住宅ローンを借り入れたときの記録
・抵当権の設定金額が記載された登記事項証明書
・「市街地価格指数」により推察した土地の価格
・「建物の標準的な建築価格」により推察した建物の価格

2つ目のポイントは、建物の減価償却は被相続人が取得した時から計算することです。
取得費の計算をするときは、建物の場合が減価償却が必要となります。

通常譲渡所得を計算するときは、売却して本人が不動産を取得してからの年数で計算します。
一方で相続した不動産の場合、被相続人が取得してからの年数で計算します。

ただし、減価償却費は建物の取得価格の95%が上限とされています。
相続した不動産は築年数が古いことが多く、ゆえにこの上限となるケースもあります。
結果として、譲渡所得が高額になってしまう恐れがあります。

3つ目のポイントは、相続から3年10か月以内の売却では取得費に相続税を加算できることです。
相続税を支払う場合、造族を知った日の翌日から3年10か月以内の売却であれば相続税を加算できます。
具体的には本来の譲渡所得から支払った相続税を引いた分を譲渡所得とできます。

□確定申告をしないといけなくなるケース

譲渡所得がマイナスであれば基本的には確定申告は不要です。
ただし、以下の2つのケースの場合は確定申告が必須です。

・3000万円控除を適用して譲渡所得がマイナスになったケース
・譲渡所得のマイナスを特例で損益通算したケース

□まとめ

今回の記事では、相続した不動案を売却するときの確定申告について解説してきました。
基本的に譲渡所得が発生した時は確定申告が必要で、譲渡損失が発生した時は不要と覚えておきましょう。
また、確定申告が必須な場合で確定申告を行わないことにはデメリットしかないため、忘れずに行いましょう。

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