田んぼを含む農地を売却するとき、どのような税金がかかるか知らない方も多いでしょう。
農地の売却の際はいくつか条件も課され、一般的な土地より難しくなっています。
そこで今回の記事では農地売却時にかかる税金や、売却の際の流れをご紹介していきます。

□農地売却でかかる4つの税金

1つ目は「譲渡所得税と住民税」です。
まず、譲渡所得とは「不動産を売ったときに得た所得」のことを指します。
これは給与所得とは別物として扱われるため、分離課税となります。
また、譲渡所得には所得税と住民税がかかります。

これら税金の税率は、所有期間によって変わってきます。
計算方法などについて、詳しくは後ほど解説していきます。

2つ目は「復興特別税」です。
これは東日本大震災からの復興に使用する税源を確保するために発生する税金で、特別措置法に基づいています。
所得税や法人税に上乗せして発生し、譲渡所得に対しては2037年まで2.1パーセント発生します。

3つ目は「印紙税」です。
これは特定の文書を作成するときに発生する税金です。
農地を売却するときは、契約金額に従って税額分の印紙を張り付ける必要があります。
なお、このような不動産売買契約の場合、売主と買主の2通分の印紙税がかかるので注意しましょう。

具体的な税額は、以下の通りです。

・10~50万円の場合、400円
・50~100万円の場合、1000円
・100~500万円の場合、2000円
・500~1000万円の場合、10000円
・1000~5000万円の場合、20000円
・5000万~1億円の場合、60000万円
・1~5億円の場合、10万円
・5~10億円の場合、20万円
・10~50億円の場合、40万円
・50億円~の場合、60万円

4つ目は、「登録免許税」です。
これは「不動産の登記手続きの際に納付する税金」です。
農地の売却時には所有権が売主から買主に移り、この移転を証明するために「所有権移転登記」が必要です。
このときにかかるのが、登録免許税です。

売却価格の2パーセント分の登録免許税がかかります。
たとえば土地を500万円で売却するときの登録免許税は10万円です。

□農地売却にかかる譲渡所得税

譲渡所得税とは、農地を売却した際の成約価格(譲渡価格)に対してかかる税金のことを指します。
この計算方法については、後ほど紹介します。

この税金について注意すべきポイントは2つです。

1つ目は、取得費が分からないときは、「取得費を売却価格の5パーセントとみなすこと」です。
これを概算法と言いますが、場合によっては譲渡所得税を多く払わなければなりません。
取得費については、できるだけ調べておくことが大切です。

2つ目は、税率が所有期間によって変わってくることです。
これも後述しますが、譲渡所得税は「所有期間が長いほど」税率が低くなる性質があります。
住んだ期間ではなく所有した期間である点に注意しましょう。

□農地売却にかかる譲渡所得税の計算方法

まずは「課税譲渡所得金額」を求めます。
これは、「(収入金額)―(取得費+譲渡費用)」で求められます。
なお、取得費は「農地を購入した時にかかった費用の合計」、譲渡費用は「譲渡の際にかかった費用の合計」、収入金額は「農地の売買代金」です。

たとえば農地の売却代金が1500万円、農地の取得費が100万円、譲渡費用が100万円のとき、課税譲渡所得金額は1300万円となります。

次に、農地売却時に適用できる800万円の控除を使用したとします。
このとき、課税譲渡所得金額は500万円となり、結果として節税につながります。
なお、この控除については後述します。

続いて、税率をかけます。
所得税ですが、実は長期譲渡所得と短期譲渡所得で税率が異なってきます。
この長期譲渡所得とは所有期間5年を超える長期所有の場合を指し、反対に5年以内の場合は短期譲渡所得となります。
たとえば所有期間が満5年のとき、これは短期譲渡所得となります。

長期譲渡所得の所得税率は15パーセントである一方、短期譲渡所得の所得税率は30パーセントです。
また、長期譲渡所得の住民税率は5パーセントである一方、短期譲渡所得の住民税率は9パーセントです。

つまり、長期譲渡所得の方が税率が低く、節税になります。
前述したように満5年の所有は短期とみなされるため、注意してください。
また、住んだ年数ではなく所有した年数で考える点も覚えておきましょう。

先ほどの例を用いて、続けて実際に計算してみましょう。

まずは5年所有した場合です。
この所有は短期譲渡所得にあたるため、所得税率は30パーセント、住民税率は9パーセントになります。
そのため、所得税額は150万円、住民税額は45万円となり、税額の総計は195万円となります。
さらに復興所得税が2.1パーセント(10万5千円)かかり、総計は205万5千円となります。

次に、7年所有した場合です。
この所有は長期譲渡所得に当たるため、所得税率は15パーセント、住民税率は5パーセントになります。
この場合、所得時額は75万円、住民税額は25万円となり、税額の総計は100万円となります。
これに先ほどと同様復興所得税を足し、総計は110万5千円です。

比べてみると、利益を500万円得た場合、所有年数によって総計が2倍ほど変わってきます。
そのため、売却時期は慎重に検討する必要があります。
また、ある程度の期間所有して売却することを検討している場合、家のメンテナンスをしなければ売却額が下がってしまうことも押さえておきましょう。

□農地を売却するときの流れ

農地の売却方法は2種類あり、「農地のまま売却する方法」と「転用して売却する方法」です。
それぞれで売却の流れは異なるので、順に解説していきます。

・農地のまま売却する場合

この場合、農地を売却する相手が「農家」と「農業生産法人」に限られます。
かつ、以下の要件を満たしている必要があります。

・農地取得後に50a(約1512坪)以上の面積の所有
・所有している農地すべてで農作業を行っている
・常に農業を継続して行っている
・農業に必要な機材や人材を、適正数所有している

ただし、北海道の場合は農地取得後の所有面積が2ha以上である必要があります。

これら要件から分かることは、「農地取得後に農業を継続できる人」にのみ、売却対象を限定していることです。
これら要件を満たす人は限られるので、なかなか購入希望者が見つからないこともあります。
売却に時間がかかる可能性が高いことを、押さえておきましょう。

農地のまま売却するときの流れは、以下の通りです。

1:買い手探し
2:売買契約締結
3:農業委員会に売買許可申請書の提出
4:所有権移転請求権の仮登記
5:許可次第、登記と代金の精算

農地の売却時は一般的に、「農業委員会の許可が下りなかった場合は売買契約を白紙にする」という特約を設けます。
その後許可が下りれば契約締結、下りなければ契約なしということになります。
そのため、売買契約後の登記は本登記ではなく、仮登記になります。

最後に、農業委員会に提出する書類を紹介します。

・登記簿謄本
・土地の位置図
・住民票
・農家証明書

ただし、不動産仲介会社に手続きを代行してもらう場合、これらに加え「委任状」が必要になります。
これら書類について詳しい情報は、農業委員会のサイトで確認可能です。

*農地を転用して売却する場合

まず、農地の転用は「自給率の低下につながる」という理由で許可されない場合があります。
農地の転用を検討している方は、この点についてあらかじめ押さえておきましょう。

農地を転用できて転用後の土地のニーズが高い場合、高値で売却できる可能性があります。
ただし、転用の際には「立地基準」と「一般基準」のいくつかの条件をクリアする必要があります。

まず「立地基準」についてです。
立地基準は「農用地区域内農地」、「甲種農地」、「第1種農地」、「第2種農地」、「第3種農地」があります。
このうち「第3種農地」が最も転用許可が下りやすいです。
一方で農用地区域内農地といった「農地としての利用に制限されている土地」の場合、転用がそもそも不可能となっています。

次に「一般基準」です。
これは農地を「どのような用途に転用するか」に対する審査基準です。
たとえば「転用した方が高く売れる」というような安易な理由では、申請を通せません。

一般基準の項目は、以下の通りです。

・申請者の資金力と信用
・転用する農地の関係者の同意
・転用後に土地の利用見込みがある
・転用の目的が制限されているものかどうか
・事業目的の転用の場合、協議が完了しているか
・転用後に合筆する場合、規制に反していないか
・目的達成のための条件を土地が満たしているか(広さ・アクセスなど)
・転用による周辺農地への影響がないような措置を取っているか
・一時的な利用の場合、将来的に農地に戻す見込みがあるか

次に、農地を転用して売却する流れを紹介します。

1:買い手探し
2:許可を条件とした売買契約の締結
3:農業委員会への相談
4:転用許可申請
5:所有権移転請求権・仮登記
6:本登記、代金支払

□農地売却時の確定申告

農地売却を行った場合、確定申告が必要です。
その際に必要な書類は以下の通りです。

・確定申告書B
・譲渡所得内訳書
・本人確認書類
・売買契約書の写し
・農地取得時の売買契約書の写し
・領収書
・登記簿謄本

確定申告のタイミングは、農地を売却した翌年の2月16日から3月15日の間です。
ただし、納税タイミングは現金の場合は確定申告当日、口座引き落としの場合は4月下旬と異なる点に注意しましょう。

□800万円の特別控除の特例について

農地拡大を希望する人や意欲的な認定農業者に対し、農業委員会の斡旋により売却する場合に限り、「譲渡益から800万円を控除する特例」を使用できます。
ただし、抵当権などが設定有れている場合は特例を使用できない点には注意しましょう。

□まとめ

今回の記事では田んぼなどの農地を売却したときに発生する税金をご紹介しました。
農地売却は条件がいくつかあるので、不動産会社に相談するのがおすすめです。
当社では福井・北陸周辺で不動産の売買を行っています。
福井・北陸周辺で農地含む不動産の売却を検討している方は、お気軽にご相談ください。

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